"TechCrunch Tokyo"のトリをつとめた「Strikingly」のCEOがで伝えたかった3つのこと

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中国人として初めてYCombinatorを卒業したDavid Chen氏の講演を本日参加した『TechCrunch Tokyo 2013』で聞く事が出来たのだが、何だか胸が熱くなったので書き留めておく。


YCombinator」を卒業する事が何を意味するかや「Strikingly」がどういうサービスなのか等については以下の記事を参考にしてほしい:
Y Combinator卒の中国人、Strikingly創業者も来日講演! (TechCrunch Japan)

今回のイベントでDavid Chen氏は最終プレゼンターとして登壇したが、「みんなも疲れてるだろうし、自分もクタクタなので資料とかはそんなに使わずに話させてもらいます」と言い放った後に、自分達がStrikinglyを立ち上げるまでにどのような経験を乗り越えてきたかをまるで物語を語るように話し始めた。

その中で3つの事を伝えたかったらしいので、その3つを紹介しよう。



1. やり続ける事(Don't quit)


Strikinglyを初めてYCombinatorへ持ちかけた時は実は受け入れ試験で落ちている。
準備万端で臨んだプレゼンは成功し、合格を確信していた彼らはすぐに寿司バーへ直行して勝利の宴を開催していたとの事。しかし食事中に不合格の連絡が来てからメンバー3名はまだ手が付けられていない寿司を眺めながら20分ほど黙り込んだらしい。

Chen氏が言うには成功間近だと思っていた時に大きな挫折を味わうスタートアップチームはモチベーションが砕けてしまい、サービスの勢いも衰えてしまうとの事。
しかし寿司バーで彼らは不合格通知を受けたサービスを更に磨き上げ、YCombinatorが間違っていた事を思い知らせるために今まで以上に結束し、最終的にはサービスが認められる。

ここでの教訓は諦めずにチームとして信念を貫く事が大切だと言う事ですね。

ちなみにこれだけだとありきたりなアドバイスだと思うが、Chen氏は立ち上げメンバー全員が同じメンタリティーを持つことが大切だと強調していた。

懇親会の時に彼と立ち話をしたのだが、実績も何も無いサービスに対して、何があっても折れる事のない強い気持ちを持つパートナーを探すのがおそらく最も難しく、最も大切な事だと語ってくれた。「メンタリティー」という単語を連呼してたけど、どうやらこれがお気に入りらしい。


2. まずはプロダクトの半分だけ作る(Build half a product)


多くのスタートアップはサービスを完璧に仕上げてから市場に出す事を目指すが、Chen氏に言わせればそれだと遅すぎるし、市場に出す前から完璧になる事は無い。

例えば彼は以前に無料機能しかなかった当時のStrikinglyサイト内に「プレミアム機能が利用できる有料商品へのアップグレードボタン」を設置したらしい。
プレミアム機能など用意していないのにだ。。
このボタンを選択したユーザーには「ただいま支払いシステムがメンテナンス中です。また後日お試しください」と表示されたようだ。
支払いシステムなど本当は存在しないのにだ。。

彼らは「プレミアム機能に申し込みたいが、支払いシステムはいつになったら準備できるのだ?」という問い合わせが来て、はじめてプレミアム機能と支払いシステムを作り出したとの事。

これだけ聞くと「何だか効率が悪いなぁ。事前にプランしておけばいいじゃん」とか思う人もいるだろうが、Chen氏のやり方は「まず試してみてユーザーの反応を見る」という形だ。彼の場合は本当に何も考えずにただただ試してしまうのだ。

とにかく彼らは計画や改善ばかりに時間をかけ、ユーザーへのサービス提供を遅らせる事を非常に嫌うようだ。

これは極端な例かもしれないが、例えば日本人が「外国人と英語が喋りたい」と思ったらきっと参考書を買ったり、TOEICなどを受けてある程度のスコアが出たら実践に挑むのだろうが、Chen氏だったらすぐにタクシーに乗り、外人がいるパブにでも言って積極的に話しかけるのだろう。

こう考えるとChen氏の考え方が功を奏する場合も大いにあるように思える。


3. スーパーファンを作る(Create super fans)


「カスタマーではなくスーパーファンを作る必要がある」と彼は何度も強調していた。
これは特に統計的な効果をChen氏が説明した訳ではないのだが、とにかく自分のサービスを大好きだと言ってくれるスーパーファンが不可欠だと彼は考えている。

スーパーファンはサービスを口コミで拡散してくれるし、困っている他ユーザーを助けてくれる時まである。Chen氏が来日する時はいつもユーザーの家に無料で泊まっているらしいが、これもスーパーファンが是非おもてなしをしたいと言ってきたとの事。

スーパーファンはマーケティング活動も代わりに行ってくれるし、クレーマーのケアまでしてくれる事だってある。そういうファンに支えてもらえるのが幸せなサービスだと言わんばかりに説明していた。

【後列の左から】僕、TechCrunch日本版編集長の西村さん、Strikingly CEO David Chen、
Readdle Marketing DirectorのDenys Zhadanov、AOLオンライン・ジャパン株式会社 代表取締役の奥江さん【前列の左から】Locaruu CEOのYuna Kimさんと最後にヤマハの小林さん



まとめ


Chen氏は数値、データ、お金などの一般的な経営者や投資家が重要視する項目についてはそんなに興味を持っていなく、とにかくユーザーを満足させ、ユーザーに好かれる事を目指しているようだ。

確かにカスタマーが増えればお金も増えるので経営者としては嬉しいが、おそらくChen氏のモチベーションはお金では動かないのだろう。

サービスを喜んで利用してくれるユーザー、サービスの素晴らしさを口コミで拡散してくれるユーザーなど、そういったユーザーのリアルな反応をモチベーションに変えてサービスを進化させている様に感じた。

ゴールドマン・サックスを辞めてまでスタートアップを立ち上げた彼らしい素敵な考え方ですな。

例えサービスが儲かっても、自分が楽しめてなければ意味がない。
お金を儲ける事が目的ならゴールドマン・サックスに残ればいいだけだ。

好きな事をやり続ける事がきっと彼の幸せなのだ。
好きな事だけをやり続ける事によってサービスが潰れてしまう事もあるかもしれないが、そうなればまたやり直せばいい。彼のスキルがあればお金に困る事はないので、例え失敗してもきっと何度でもチャレンジし続けるだろう。

だから彼はチャレンジを続けるために不可欠なモチベーションの上げ方を重要視し、自分にとって何がモチベーションアップにつながるかを把握した上で、そこに力を入れているのではないかな。

裕福に、そして自由に育った若いスタートアップ経営者の1つのパターンが見えた気がした。
彼のようなタイプはあまり日本からは生まれないと思う。
そういう意味でも有意義な出会いでした。

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