クラウドがもたらすパラダイム・シフト ~日本企業はこう戦えっ!~


本日日本のクラウド化はなぜ遅れているのか?”という書籍を読み終えた。
非常に面白かったのでブックレビューも兼ねて色々書きます。
(※ちなみに今回の投稿では実際の書籍から引用させてもらった表現が多々あります)

この本では技術の進化や変化が著しいICT企業にとって、いかに10年先を見据えた世界標準のクラウド・エンジニアが必要かという事が主に論じられている。

生活で水道やガスが不可欠であるように、「ICTも近い内に企業にとって欠かせない存在となっていくのは間違いない。

いや、企業だけにとってだけでなく、ICT資産は「社会インフラ」になる日は近い。

こうなると全世界が「一つの市場」となる。
つまり日本人だろうと、イギリス人だろうと、同じ土俵でビジネスを展開する時代はもうすぐそこまで来ているのだ。

“日本のクラウド化はなぜ遅れているのか?”という本書のタイトルにもなっている問いに対する私なりの答えは:「日本人の悪い部分が目立っているため」であると本書を読み終えて改めて感じた。

インターネットの普及が「国境を超えたビジネス」を可能にした事によって、企業はもはや国内のみを対象マーケットとして見るだけでは生き残れない。

現段階で日本企業の多くはこのICTの「一大パラダイム転換」に対応できていないのだ。

自分が思うに、日本の強みは他人から学ぶ「器用さ」と「生真面目さ」で付加価値を「創出」すること。逆に弱みは新しい「型」や「仕組み」を作る・対応することが苦手であるという点だ。

つまり日本人は、一刻も早くこの苦手な「変化への対応」という壁を乗り越えなくてはならない。

ではこの変化にどのように対応すべきか。
日本人は「労力」を中心とした労働集約型のモノづくりの時代を過ごしてきたが、近年到来したクラウド時代は、知識情報を主体とする「知力」の時代である

ただ、労力を生かしたビジネスモデルは新興諸国の労働コストを考えるともはや日本人は太刀打ちできなくなると思われる。

それならばいっそのこと、「労力」の分野は例えばアジアの新興諸国に任せ、知識や情報を主体にしたノウハウやアイディアそのもの、あるいはそれを形にした知識や情報を主体にした知識集約型ビジネスで勝負しようという戦略転換を急がなければならない。

大胆な戦略に聞こえるかもしれないが、「モノづくり国家の日本」という位置から一歩踏み出し、アジア諸国の中のハブ機能を担う「知識拠点国家の日本」としての位置を確立する事が出来れば、アジアの中で再び躍り出る可能性があるのだ。また、この戦略は日本人の国民性を活かすためにも最適だと感じる。

日本人は昔から勤勉で、器用だと言われてきた。自分も海外に14年間暮らし、高校まではインターナショナルスクールで過ごしたため、幸いにもあらゆる国の人々と知り合う事が出来た。

著者の言葉を借りるが、「世界は広しといえども、日本人ほど高い教育水準を均質に身につけ、学習意欲に富み、同時に高い倫理観を兼ね備えた国民はいないのではないか」と私も思っている。

現在はまだ上手く使いこなせてはないかもしれないが、日本企業が世界市場を視野に入れ、グローバルに展開しようというときにはこの国民性は最大の武器になっていくため、上手く使いこなしていかなければならない。

本書の前半部分では日本がどのように押し寄せる時代の波に対応していくべきかという点について説明されたが、後半部分では「クラウド時代を勝ち抜くためのルールと仕組み」について紹介されていた。

本書の著者は「日本 サード・パーティー 株式会社」(JTP)の代表取締役が執筆しているものなのだが、この会社の評価制度や、「人財」育成に関するノウハウが細かく記されていた。

全てを紹介したい所だが、項目が多すぎるのでここでは自分が特に気に入った部分だけをピックアップさせて頂きたい。

まずはどのような人材が今後求められるようになってくるかについてだ。
ICT業界を例に説明させて頂くと、グローバル企業との論争になれば、国際入札に耐え得る品質や価格の問題をクリアし、さらには海外のエンジニアやシステム担当者とも直接、かつ対等に交渉できるコミュニケーション能力の高い人材を揃えておく必要が企業には出てくる。そのような高度な専門知識や能力を見につけようと「自ら努力する人材」が会社内に豊富にいなければ、世界での生き残りを懸けた競争などできるはずがない。

つまり会社にはそうした人材をできるだけ客観的に、そして公平に評価し、モチベーションを高める「仕組み」がなければならない。

そこでは年功序列的な要素をできる限り排除し、機会均等に基づいた、個人の努力に報いることのできる原則を徹底しなくてはならない。


次にこの会社の人材を評価する「仕組み」作りの際に重要視されているポイントを紹介したい。
5つのポイントは以下の通り:

  1. 「人材育成」のための仕組みは、できるだけ社員が「特別の能力」を惜しまずに「自己啓発」する、「社風」にまで導くこと。
  2. 給与や賞与には、社員自身の努力で勝ち取れる部分を、誰にも見得る形で取り入れること。
  3. 経営者側は、なぜこの「仕組み」が必要なのか、繰り返し説明する努力を怠らない事。また、社員からの質問には必ず答えること。
  4. 「仕組み」はなるべく分かりやすく、単純なものにすること。
  5. 「仕組み」の対象者に例外はなく、役員や部長にも「特別の努力」を奨励すること。

現在、大半の日本企業では「年功序列制度」が取り入れられている。だがこの制度を取り入れている会社の経営者や人事担当者には“みんながやってるからウチでもやっている”と考えている人が少なくないだろう。

例えば新入社員から「なぜPCスキルやコミュニケーション能力が高くて、労働時間さえも長い私より、大して突出した能力のないあのおじさんの給料の方が高いのですか?」という質問を受けても、「年齢が上だから」とか「家族がいるから」とか「20代の社員が40代の課長より給料が高くなった前例が無いから」など若い社員の疑問を全く解決しない返答をする人事担当者も多くいると私は予想している。

そもそも日本全国で取り入れられているこの「年功序列制度」では若い者が上の者には意見すら言う事のできない環境が出来上がってしまっている場合が多い。

例えば昔よりは少しマシになったとはいえ、高校のサッカー部などでは恐らく先輩に逆らえない後輩が今でも多くいるはずだ。

中学生から巻き込まれるこのような「年功序列的環境」が企業内でも継続され、能力のある優秀な若い社員も埋もれていってしまう場合も多いのではないだろうか。

しかし先ほど挙げたJTPの5ポイントを読んでもらえればお分かりになる通り、ここでは実力のあるものが報われる仕組みになっている。年齢も国籍も関係なく、成果を出した者がしっかりと全員の前で評価されるのだ。

しかも「何で私の評価が低いのですか」という質問がなかなか出ないぐらい、評価方法などが透明化されている。また、そういった質問が出たとしても、経営陣や人事担当者はしっかりと納得のいく説明が出来るようにもなっている。

大規模なリストラを実地したある大企業のニュースがテレビで放映されていて、その中で実際にクビになった人達がインタビューで「会社をクビになったら私はどうやって家族を養えばいいのですか?」など、私からしたら信じられない事を言っていた。

こんな質問を投げかけられたら、私だったら「会社にとって必要な人材になる事ができなかった自分の責任だろ」と即答するだろう。

ここでは言いたいのは
プロスポーツの世界などでもそうであるように、ビジネスも実力がなければ生き残れない時代に日本でもようやくなってきたという事。

例えばサッカー日本代表がドイツワールドカップに出場した時と南アフリカに出場した時のメンバーは随分異なっている。自分の力やプレーの質を向上させる事の出来なかった選手は新しい「新戦力」である選手と置き換えられるのだ。そして新しい戦力は大体若い選手になる。

企業でも同じ現象が今後は出てくるようになる。

若ければ良いという訳ではないが、例えばICT業界のように進化・変化の激しい業界では新しい情報に慣れ親しみやすい若い世代の方が有利になってくると思われる。でもサッカーの中村俊輔選手や川口能活選手の様に若くないからこそ備え持っている能力を最大限に活かして代表として活躍している選手もいる。

この様に日本人の悪い部分とされている「年功序列制度」などを排除し、いわゆる「ベストメンバー」で世界と戦う姿勢が今後の日本企業には期待される。

私もどんな時代の波が押し寄せても、サーフボードを出して余裕で波を乗りこなせるような「人財」に早くなれるよう今のうちに特別な努力を続けようっと。。


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